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ファッションの世界

ブランドには、無名の職大たちの技が結集されている。それらをどう磨かせ、継続させてきたか、それが本物のブランドとそうでないものとを分かつ判断基準になる。職人の研ぎ澄まされた技術は、そこに聖なるものを表出させる。それこそが、人々を長い年月、魅了し続ける理由なのではないだろうか。しかし職人芸だけでは、ファッションの世界では生き残れない。時代を捉え、鮮やかに料理する創造性と「他に例を見ない」独創性が不可欠で、それが伝統工芸や着物の世界とは違う宿命的な難しさなのだ。そこでデザイナーやディレクターという人々が関わってくる。彼らは売れるものを作るという使命と、芸術性を落としてはならないという命題との間で引き裂かれそうになりながら仕事をしている「天才」たちだ。少しでも売れるほうに偏れば顧客は敏感に察知してすぐさま離れていくし、芸術性にこだわって売れなければ自分が消え去る運命にある。その両方のづフンスを取ることのできる何人かしか生き残れない過酷な仕事は、敬意を表するに値すると思う。今のブランドは、どんなものでもマーケティングの匂いがするし、広告戦略からメディアの扱いまで軽佻浮薄極まりない時代が長く続いた。だからブランドという言葉に拒絶反応を起こす人が多いのは当然なのだろうけれど、でも、なんだか残念なことに思えてならない。