私が尊敬する医学博士に、滋賀医科大学助教授の笠井寛司先生がいる。人体と直接かかわりあう下着の研究をする私にとって、医学的なアプローチは欠かせない課題なのだ。この意味で、笠井先生にはたくさんのことを教えてもらっており、たいへんにお世話になっている。ショーツの話になると、笠井先生のユニークな研究に触れないわけにはいかない。先生は『名器の科学』という著書をお書きになっているのだが、なんと三二〇〇人の女性の性器を精密に測定したデータをおもちなのだ。万人が関心をもっている部分ながら、科学のアプローチがなかなかされることのなかった分野に、科学者の目で分け入った先生のお仕事は、これから先もさまざまな方面で生かされていくものと確信している。さて、先生は『名器の科学』のなかで、ショーツに触れ、こう書かれている。「女性がちょっと足のポーズを加えると、それにつれて大陰唇の表情もさまざまにかわる。その形がつかみにくいところはないのだが、歩けば当然のことながら、大陰唇の形がさまざまに変化する。その上をおおう薄い布も、動かざるをえないわけだ。さらにいえば、パンティストッキングにしても、中央の縫い目は固定されている感じがするが、実は激しく前後左右に動いている。本来なら、縫い目が股間におさまって固定されるはずだが、たいていの女性は下にすべりのいいパンティをつけているので、縫い目もすべって動くのである」ショーツがおおっている女性の股間は、またさまざまな分泌物を排出する部分であり、ややもすると細菌などの培養地にもなりかねないと指摘し、あまり女性器やその周辺にぴったりとフィットしたショーツはよろしくないと書かれている。できればノーパン、それがダメならブルマーのようなゆったりした通気性の良いものがいいという。しかし、いつもノーパンでいることはできない話だし、さりとてブルマーのような下着をつけていたのではいかにもカッコが悪い。下着の研究をする立場の私にしてみれば、先生の自説を尊重しながら、なおかつファッショナブルで通気性に富んだショーツを考えなければならないのだ。そこで、ショーツの股の幅が問題になってくる。私が思うに、この幅のサイズや自分自身の性器の長さを知っている女性はほとんどいないだろう。しかもその測定は、からだの動きによってもサイズがかわってくるため、ひじょうにむずかしいのだ。たとえば、開脚三〇センチで直立している状態のとき、股の幅は四・二センチだが、寝ている姿勢だと五・五センチと大きくかわる。したがって、だいたい四〜六センチのところで基準幅をいちおう設けているのだ。もちろん、各製品によってもクロッチ(股布)の幅はちがっている。一五〜二〇年前は、安全性重視という観点から七〜八センチだったのだが、今では機能面、快適性、ファッション性重視ということから五センチ、プラスマイナス一センチというものが多いようである。ただし、安心して着用するという実用品はさらに幅が広くなる。
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